熊本県議会 本会議で城下広作の会議録

2.TPP問題と県下の今後の農業のあり方について

(1)フードバレー構想における販路拡大戦略
(2)就農対策
(3)農地集積

◆(城下広作君) 先ほど、午前中の佐藤県議のときの話にもあったんですけれども、昼間のうち逃げる、早く逃げるという話も答弁でありましたけれども、例えば、夏は、早く明るいうちに逃げるといっても、避難場所が体育館であれば大変蒸し暑くて、大変、ある意味では、そこの空間として不適合と。そうすると、早く逃げるとしても、その場所が、なかなか環境が劣悪であれば、逃げる人がなかなか行きたがらないということもあるから、避難場所の改善も考えないと、昼間から逃げるといっても、なかなか暑い場所にさあ行きましょうかというと、できにくいんではないかと。このこともちょっと私は今感じております。ですから、本当に、ある意味では、合理的にといいますか、本当に早く逃げるんだったら、逃げる場所というのは、ある程度の環境も整えないと、やっぱりそこに簡単に誘導できないというようなこともあるんじゃないかというふうに思います。
また、答弁の分も、2分ということですけれども、知事は、防災、減災にかける思いが多くて、2分以上答弁していただいたことは大変ありがたいなというふうに思っております。
次に、2点目でございます。
大変話題になっておりますTPPの問題と県下の今後の農業のあり方についてお尋ねをしたいと思います。
この問題は、午前中も佐藤議員が取り上げられておられました。私も農業政策には関心を持っており、農業なくして国家なし、熊本県も農業あってこそ成り立っていると思っています。当然、林務水産業も同様であります。
政府は、過日、成長戦略の第2弾として、農家所得を今後10年間で倍増させると発表されました。今のところ明確な財源の裏づけはないようで、そう簡単にいくのか心配です。一部では、7月中旬から下旬にかけて予想されるTPP交渉参加にあわせて、反対の立場をとる農業関係者に理解を求める予防策として捉える意見も少なくありません。いずれにしても、日本の農業の現状からすれば、所得倍増は高いハードルに間違いはありません。
しかし、TPP交渉参加を決定する時期も間近に迫っており、政府は、まず先に、聖域がないTPPに聖域を持ち込み、かち取ろうとしている重要5品目、米、麦、牛肉、豚肉、乳製品・甘味資源の獲得に集中するのが先決だと思います。しかし、この条件が受け入れられなければ交渉参加の撤退もあり得ると政府が述べていることや、県議会も、重要5品目や国民皆保険制度などの聖域が確保できないと判断した場合、脱退も辞さないとすることの意見書を決議した経緯を踏まえれば、そのときは参加の辞退を迫るしかないと思います。
今後、政府は、TPP交渉参加に当たり、なお一層国民に対して正確な情報を公開し、約束したことは必ず実行するとの決意で臨んでいただきたいと思います。その決断のもとで、国民は、それぞれの分野で今後のとるべき道を決定することになります。
そこで、3点ほど、本県の今後の農林水産業の取り組みについてお尋ねします。
まず初めに、県の今後の農業振興策の切り札として言われる県南振興のフードバレー構想について伺います。
この事業は、小野副知事が陣頭指揮をとられ、獅子奮迅の闘いをされていることはよく存じています。このフードバレー構想は、県南地域の豊富な農林水産物を生かし、食品、バイオなどの研究開発機能や企業を集積、推進することで、地域の活性を目指す構想と伺っています。
ただ、問題は、県南地域の農産物は、国が目指す聖域の重要5品目に入る品目は米ぐらいで、仮に日本が主要5品目を認められ、TPP参加を決めた場合、米以外の主要農産物が多い県南地域は、守られる農産物がほとんどない状況です。逆に、他の参加国から、農産物が県南にも大量に入り込むことが予想されます。例えば、トマト生産は日本の19倍のアメリカ、4倍のメキシコ、タマネギは日本の3倍の生産のアメリカ等が、関税の撤廃によって大量に輸出されれば、影響を受けることが十分に考えられます。
また、フードバレー構想では、売り込み先も、アジアとの貿易拡大、首都圏等への販路拡大としていますが、御案内のとおり、最大のマーケットの中国との輸出は不透明で、首都圏等への売り込みは、他県との競争はもとより、外国との競争が大きくなる可能性があります。
このような状況を見据えてフードバレー構想を推進されていると思いますが、どのような影響を想定されているのか。また、中国などをターゲットにされていると思いますが、今後の関係を心配する声も少なくありません。具体的な販路拡大の戦略について、小野副知事にお尋ねをします。
次に、第2点目の質問ですが、県下の就農対策について伺います。
県下の農業従事者で販売農家の平成22年度の年齢構成を見てみますと、一番多いのが70歳以上で41%、次いで50歳から59歳で16.6%、3番目が65歳から69歳で13%、この合計で70%を超えます。また、主業農家で見てみますと、一番多いのが50歳から59歳で25.1%、次いで70歳以上が22.4%、3番目が60歳から64歳で16.4%、この合計が約64%になります。
この数字を見れば、いかに農業従事者の年齢構成が高いかは言うまでもありません。特に驚くのは、販売農家の40%、主業農家の22%以上が70歳以上であるということです。確かに、日本人の寿命は世界トップクラスで元気な方が多いのですが、あと5年もしくは10年すれば、現役をやめることが十分考えられます。そのうちに次の世代も70歳の仲間入り、ここ10年以内で半数の農業従事者がいなくなるのは遠い先の話ではありません。TPP参加が仮に決まっても、参加猶予が10年間あります。しかし、農業従事者の後継がうまくいかなければ、TPPの影響を受けるより後継者問題が先に起こり、農業に壊滅的被害を受ける可能性が考えられます。
本県は、全国的に見ても農業県であり、高齢化率の高い県であります。言いかえれば、最も影響を受ける、高い県となります。そこで、県も、企業の農業参入や新規就農者を受け入れる施策を、国の支援や県独自の支援で進めて効果を出していますが、この数字を補うには到底及びません。そこで、今後ますます厳しさが予想される本県の就農対策について、より実効性のある対策は打ち出されるのでしょうか、お尋ねをします。
次に、第3点目の質問ですが、国は、農家の所得倍増を図る上で、農作業を効率化し、生産コストを下げる策として、農地集積を打ち出していますが、期待が持てる策だと思います。ただし、その効果を享受できるのは、比較的平たんな優良農地が集積する場所に限定されることです。そして、作付品目も、国は、米、麦、大豆を想定していることから、過日、中山間地を持つ首長さんとの懇談で、また中山間地の農家の方々が切り捨てられると心配する声も聞かれました。
県は、農地集積を国が出す昨年度から独自の取り組みを開始しており、今回の国の取り組みを歓迎していると思いますが、中山間地の対策も必要だと思います。
そこでお尋ねしますが、農地集積をするに当たり、やはり一番苦労するのが土地所有者の協力だと思います。しかし、農家では土地に対する思いが強く、なかなか手放さない傾向があります。そこで、県が先駆けて実施した本県独自の農地集積の取り組みはどのような状況か、お尋ねします。
また、国は、農地の貸し借りを仲介する新機構、仮称でございますけれども、農地中間管理機構を都道府県につくるとしていますが、新たな役人の天下り先になるとの心配する声も上がっていますが、先駆けて実施した経験のある県として、どのような形態、もしくは機関がより効果を発揮すると思われるか、お尋ねします。
以上、フードバレー構想における販路拡大の戦略については、最近髪型を変えまして、きりっとされた小野副知事に、そして就農対策と農地集積については農林水産部長にお尋ねをいたします。
〔副知事小野泰輔君登壇〕