熊本県議会 本会議で城下広作の会議録
1.川辺川ダム問題について
◆(城下広作君) 公明党の城下広作でございます。4月に知事が当選をしまして初めての質問でございます。きょうは知事に質問をさせていただく項目が2つございます。しっかりとまた答弁をお願いしたいと思います。
私、知事が当選して本当にびっくりしたことが1つございまして、知事は、6月の議会でも、いわゆる質問者に対しまして、本当にこちらをしっかり見られて質問内容を聞かれている、その姿勢に対してすばらしいなというような感じで、ある意味では見られているという感じがしまして、緊張を持ちながらこれはしっかりと質問したいなという気になりました。よろしくお願い申し上げます。
この議会、本当にダム問題が大きな問題でございます。午前中も、自民党の馬場議員、また民主・県民クラブの渡辺議員の質問にありましたように、私も、3番目でございますので、一部重複することもあります。しかし、あえて公明党の立場として質問をさせていただきたいというふうに思います。
川辺川ダム問題について、我が党としては、流域住民の生命と財産を守り、安心して暮らせる地域づくりのため、球磨川の環境に十分配慮した治水対策が不可欠であることを一貫して主張し続けてきました。
晴天下の平時における球磨川の清流は、確かに守るべき宝であります。しかし、一たび雨となれば、特殊な地形から、たちまち水量は増し、暴れる川と化してしまいます。
この球磨川の驚異的な水を治めるため、地元や県の要請により、国は、科学的根拠を用いた判断の結果、ダムによる治水対策が最善の策と結論づけていることから、今日まで国の方針に重大な関心を寄せてきました。申すまでもなく、川辺川を管理するのは国であり、河川に関するあらゆる視点からの調査研究情報に基づき、治水のあり方を決定し、河川を管理する立場にあるからです。
しかし、計画発表から42年を経過した今日まで、国の言う最善の策であるダム建設に着手するどころか、ここ数年間は、国の示す根拠の検証やダムによらない新たな治水対策の検証などに時間が費やされ、論議は平行線をたどるばかりで、何年かけて論議しても結論が出ないということが証明されただけでした。
このような中で、蒲島知事が、知事選で掲げた有識者会議を設置し、9月議会で結論を出しますとの公約実行に、事態の収拾をかけるしかないと考えたのは我が党だけではなかったと思います。
議会を目前にした9月5日、知事自身が最終決断をする前に議会の意見を参考にしたいとの要請を受け、我が会派の考えを竹口代表から、短期間で結論を出す知事の公約どおりの姿勢を高く評価する一方、有識者会議の議論を尊重し、この議会での知事の態度決定を党として重く受けとめたいと結びました。
そして、迎えた議会初日、現行計画を白紙撤回し、ダムによらない治水対策を追求すべきとの知事の態度表明を聞き、当然重く受けとめましたが、その決断内容とその理由にいささかの驚きとともに、数々の懸念を覚えました。
私個人の推測では、撤去が決まっていた荒瀬ダムを継続に方向転換されたことから、もし川辺川ダムに反対するとすれば、費用対効果を考慮した財政問題が理由の柱かなと考えていました。その次に環境問題があると思っていました。また、ダム建設に賛成する場合は、当然、球磨川流域に生活する地域住民が現存している現実から、一人の命でも守り抜くとの強い決意があるものと予測していました。
ダム断念の知事の決断を重く受けとめるものの、新たに生じてしまう県のもろもろの課題に対して、今後どう取り組もうとされるのか、重大な関心とともに、幾つかの懸念を禁じ得ません。
そこで、知事が苦渋の決断に至った中で、確認したい点と今後の取り組みに関する点についてお尋ねします。
まず初めに、民意のとらえ方についてであります。
知事は、過去の民意は、水害から生命、財産を守るため、ダムによる治水を望んだ、現在の民意は、川辺川によらない治水を追求し、今ある球磨川を守っていくことを選択しているように思うと述べられました。そして、その後の会見で、民意のはかり方の問いに、いろんな意見、日々の会話などから洞察した、民意を深く洞察する力こそリーダーに必要だと語られたとも聞きました。
私は、なるほどと思いました。私も、民意こそ民主主義の根幹だと思っています。しかし、その民意をはかることが時として困難な場合に遭遇します。この民意のとらえ方については、直接住民に問うことだとか、民意によって選ばれた議会や首長の判断によるものだとか、解釈には人それぞれあります。
このテーマが長年論じられ、近年、ともすると政争の具にされている嫌いがあることから、集会などに参加もせず、黙して語らない多くの声、つまり、民意が表に出ないケースが存在することを看過することはできないでしょう。
そこで、知事が言われた民意について、今回の判断の中で、一番強く影響を受けた意見や出来事、つまり、そのことを民意と感じた点や場面が特にあったのかどうか、まずその点についてお尋ねをします。 次に、知事が、守るべき宝として、人吉、球磨に生きる人々には球磨川そのものがかけがえのない財産であり、守るべき宝ではないかと思うに至ったと言われましたが、同じ球磨川に住む荒瀬ダムの周辺住民も、過去において川の恵みを享受できた時代があり、守るべき宝と思っている人は現在もいると思いますが、今回の決断を周辺住民はどのように受けとめていると思われるか、また、荒瀬ダム凍結の決断に影響をしてくるのか注目されていますが、知事の考えをお尋ねします。
次に、川辺川ダムの進捗に大きく左右され、建設計画が棚上げになっている五木ダムについてですが、たび重なる洪水で、地元からも強い要請があっているにもかかわらず、川辺川ダム水源地域整備計画に位置づけられて、今日まで休止の状態が続いています。五木の地域振興策の一つでもあります。
球磨川を守るべき宝として川辺川ダム中止とされた論理的整合性から、五木ダムも当然中止になるのではないかと心配する深刻な声も、地元五木村で多く聞かれます。県の管理下にある五木ダムの今後の対応と県に新たな課題となって比重を増した五木村の地域振興策について、今後どのように取り組んでいかれるのか。
球磨川の治水対策にはダムで対応するのが最善であるとして、五木村の振興をあわせて推進してきた国に対して、ダムはつくるな、村の振興策は続けろとの論理が果たして通用するのかどうか、県として大きな課題を新たに背負ってしまったことになります。
知事は、昨日、対策本部の初会合で、最重要課題として全庁挙げて取り組むと述べておられますが、この五木村の振興策について、知事のお考えと決意についてお尋ねします。
次に、知事の決断を受け、谷垣国土交通大臣は、悩まれ、いろいろな意見を踏まえた上であり、重く受けとめなくてはならないと語られましたが、しかし、球磨川の管理者は国土交通省、つまり国であり、結論に知事の判断は直結しないとも述べられました。
今後、知事は、直接国土交通大臣に会うのかということをお尋ねしたかったんですけれども、午前中に会うと言われましたので、私は、じゃあ、いつ会うのか、なるべく早く会うべきだということをお尋ねしたいと思います。
もう一点は、その大臣と会うときに、今回のダム反対の態度決定という新たなステージを迎えた中で、国に何を要望するお考えか、お尋ねをします。
以上4点、知事にお尋ねを申し上げます。
〔知事蒲島郁夫君登壇〕