熊本県議会 本会議で城下広作の会議録
2.地下水問題について

(1)取水者把握の在り方と水量計設置の徹底
(2)地下水涵養量の目標数値の設定
(3)誘致企業における地下水大量使用と地下水保全の位置付け
(4)大口利用者の節水対策と地下水保全の協力

◆(城下広作君) ありがとうございました。
今教育長の答弁は、県立高校は3メーターで設計しているけれども、2.7に変更するということなんです。ところが、小中は7校あるのですけれども、これは、市町村の権限事項、いわゆる予算執行者なものですから、県としては指導だけで、強制といいますか、そういうふうにしなさいというのがなかなか及ばないということなんですよ。高校は2.7メーターに変更してやっていただくと。私が知り得る限りでは、高校生と小中学生、高校生の方が背が高いですね、やっぱり。高校生は、自分たちは低くなったのに小学生は3メーターで高いというふうにつくられると、これはちょっとおかしいというふうに思われてくると思いますよ、やっぱり。
ましてや、熊本県だけで9校ですよ、来年つくるのが。全国でいけば相当な数です。先ほど埼玉県、300億円。これは2~3%で5億円、6億円なんですよ、浮くのが。これをやっぱり、あるときは市町村に強く言うということがあってもいいと思うんですよ。まさにこういうときが、市町村にこういう情報を的確に流して、やはり県は2.7にするから、小中が3メーターというのは、国もそういう流れでなっているんだからぜひやった方がいいですよというふうに、ある意味では強く話をしていくということが大事じゃないかと思うし、結果的には税金はめぐりめぐってみんな一緒でございますので、予算の出るところが違う、管理があるから違うということじゃなくて、その辺はしっかりと、ある意味では、県の方からも私は強い指導をもって市町村の小中の学校も2.7で対応していただければなというふうに思っています。
いずれにしろ、文部科学省の方から、これはまた市町村にも通達が来るでしょうし、ぜひ私は、もう来年度工事をされる学校から、せっかく規制が撤廃されるということの動きがわかっていれば、そのことに合わせてやるべきだというふうに思っておりますので、よろしくお願いをしたいというふうに思っております。
次の質問に移りたいと思います。
地下水の問題についてでございます。
この問題、しっかりと私も今まで唱えてきてましたので、訴えさせていただきたいと思います。
取水者の把握のあり方と水量計設置の徹底ということでございます。
ことしの夏も大変厳しい暑さに見舞われ、また、追い打ちをかけるかのようにめぐってきた突然の解散・総選挙、おかげで、体の中はさらに燃え上がり、いつもの夏よりおいしい熊本の地下水でのどを潤す機会がふえ、豊富な地下水のありがたさを痛感させられた日々でした。
既に御承知のとおり、熊本県の人口の約半数を占める3市12町の熊本地域では、生活用水のほぼ100%が地下水で賄われています。特に、人口67万を有する熊本市において、すべての生活用水が地下水で賄われているということは、全国的にも類を見ない唯一の存在であります。
このように、はかり知れない地下水の恩恵を受けている県民の一人として、私は、少年時代、故郷の牛深で断水を何回か経験したこともあり、水のありがたさを少しは理解する者として、議会においても、平成13年2月議会の代表質問、平成 14年9月の代表質問で地下水の対策を訴えさせていただきました。
今回、また地下水の問題を取り上げさせていただいたのは、依然熊本地域における地下水の減少傾向に歯どめがかからず、将来的にも安定した地下水の供給が受け続けられるのかと心配する声が、専門家を初め多方面から聞こえてくるからであります。
そして、本年6月に発表された熊本市と県の地下水保全対策調査によると、熊本地域の地下水の年間涵養量は、20年後の2025年に、都市化の進展で涵養面積が減少し、2004年と比べて6.4%、約4,000万トン減少すると予想されていることから、地下水に対して将来に不安を抱くのは当然のことと思います。ただし、予想を上回るスピードで都市化が進むと、先ほどの数字はさらに悪化をするおそれがあるということです。
こうしたことを裏づける光景として、ことし6月、久しぶりに水前寺公園に行く機会がありましたので、池の中を眺めていたら、最近のコイは背泳ぎが上手だと思って見てみますと、ところどころで水位がないためか、背泳ぎといいますか、横泳ぎといいますか、大変苦労している光景を目にしました。また、江津湖では、ボート部の学生が一生懸命練習をしているのはいいのですが、水をかくというよりは藻をかいている状況、これは筋肉がつくと思いますよ。ここでも地下水の減少やヘドロの堆積の影響で苦労している様子がうかがわれ、笑い事では済まされない深刻な状態だと、改めて認識させられました。
ことしの夏、四国の香川、徳島両県では、大変深刻な水不足に悩まされ、ダムの水は底をつき、高知県の早明浦ダムの発電用に確保する水約1,000万トンまでも放流するなどし、ありとあらゆる方法で生活用水を確保するために四苦八苦されたにもかかわらず、水配分をめぐって激しい争いが展開されていました。
両県の思いを考えますと、水不足のため水が飲めないという理由で断水を経験することがない、地下水の恩恵を受ける熊本地域の住民にとっては、水に対する感謝の気持ちに大きな開きがあるのではないでしょうか。
いずれにしましても、今後重要なことは、地下水の減少傾向に歯どめをかけ、将来的にも安定した地下水の確保ができるように、より具体的な有効策を提案し、地下水の恩恵を受ける個人や企業、団体が実践するしかないと思います。
そこで、第1点目の質問ですが、私は、平成14年9月の代表質問で、地下水の保全対策の中で一番重要なことは、何といっても正確な取水量をつかむことだと訴えてきました。それはどういうことかといえば、熊本地域において、特に熊本市を除く地域においては、取水者の特定が非常に困難であるということでした。
現に、今から3年前になるのですが、当時政府が都道府県に呼びかけた構造改革特区の中で申請した熊本地域地下水涵養特区は外されました。また、新税の導入が検討されているときでありましたが、森林税や地下水税と検討されていく中、結果的に地下水税は、取水者の特定や取水量の把握が困難であるという理由もあって、早々と断念された経緯があります。それは当然の結果だと思います。
であるならば、だれが、どれだけ地下水を使っているのかを把握されていないとなれば、地下水保全の対策は何も進まないどころか、地下水の状態を示すさまざまなデータそのものの信憑性を欠くことになります。
そしてもう1つ、正確な取水量の把握のためには、水量計の設置が重要だと訴えさせていただきましたが、当時は、水量測定器設置義務が条例化したばかりで、吐出口断面積も50平方センチメートルを超える井戸が対象となるなど、対象者が広がったこともあり、データがつかみにくかったようで、その前の年である平成12年度の水量測定器の設置率は何と15.5%でした。
いずれにせよ、あれからちょうど3年たちました。当時の答弁では「信頼性の高い採取量把握のため、市町村とも連携し、採取の届け出及び的確な採取量報告をより徹底させますとともに、水量測定器を設置していない大口採取者には、立入調査等あらゆる機会をとらえて強力に設置について指導を行ってまいりたいと考えております。」と答えていただきましたので、それ以降現在に至るまで、正確な取水者の把握、水量計設置率の向上や正確な水量の把握に対してどのような対策をとってこられたのか、また、どのような効果と結果が出たのか、お尋ねをいたします。
続けて行きます。
第2点目でございますけれども、地下水涵養量の目標数値の設定でございます。
第2点の質問ですが、やはり、地下水の保全に重要な役割を占めるのが、涵養量の確保ではないかと思います。これは、先ほど取り上げた中に、熊本地域の地下水保全のために将来予測された中でも重要な提案でありました。特に、大津町や菊陽町などの白川中流域の水田は、特殊な地質構造によって、水の浸透能力がほかの地域の水田と比べて高く、重要な涵養地帯であることは周知の事実であります。
このようなことから、前回の質問においても、白川中流域の休耕田を中心として、県や各市町村が地下水涵養のために助成する制度を考えてみたらどうかと質問したのですが、答弁として返ってきたのは「白川中流域の水田で涵養実験を行いまして、高い涵養効果が認められたところでございます。しかし、休耕田を利用した涵養対策につきましては、地元農家の意向等もございまして、御提案の趣旨も含めどのような方策があるのか、今後検討してまいりたいと思っております。」と、大変調子の抜ける答えになってしまいました。
ところが、翌年の2003年7月に、熊本県、熊本市、大津町、菊陽町、地元の土地改良区、JAなどが、この地の水田を活用し地下水を涵養するための水田湛水事業を推進する組織として、白川中流域水田活用連絡協議会を設置したり、 2004年1月には、県庁で知事立ち会いのもと、水田湛水推進に関する協定書が締結され、具体的な事業展開が始まりました。
その後も、同年8月にJA熊本果実連、2005年4月に財団法人化学及び血清療法研究所が、水循環型営農推進協議会との間で協定を締結するなど、そのほかにも、民間企業が山林を所有し苗木を植えるなどして、地下水涵養のために尽力される個人や団体がふえてきました。あの答弁から推測すれば、県のリーダーシップが発揮されたとは絶対にあり得ず、地下水の将来を危惧する市町村や団体の意識の高さだと思います。
そこで、このような事例を見ても、水源涵養の意識は確実に広がりつつあると確信するものですが、肝心の涵養、保水の面で将来的な涵養の目標数値が定まっていなければ、今後開発が進むであろうと言われている地域だけに、何の歯どめもかけられずに、いざ取り組もうとしたときには水田が消滅したとなれば、地下水の保全対策は大きくおくれることになります。
そこで、地下水の確保のために、熊本地域の将来的な涵養量の目標数値を設定すべきと思いますが、県の考え方をお聞きします。
以上2点、環境生活部長にお尋ねをします。
〔環境生活部長上村秋生君登壇〕
◆(城下広作君) ありがとうございました。
地下水が大事だという認識はありながら、地下水をくむ事業者の方々がメーターをつけるという条例があるわけですけれども、8センチ以上なわけですね、口径として8センチ以上。それ以下はメーターをつけなくてもいいんですよ。ところが、8センチ以上というのは相当大きな量をくみ上げるポンプなんですよ。これはそんなに多くございません。大半が8センチ以下です。だからほとんどメーターをつけなくていいんです。だけど、メーターをつける決まりがある8センチ以上ですら、先ほどの目標数値は17%です。それがまだつけてないわけですから。
そうなると、毎年地下水はこれだけくみ上げていますという報告書があるのですけれども、私がたびたび言うのは、メーターもつけない、また井戸の届け出も正確ではない、そしたら、年間これだけ使いますという根拠はどこにあるのですかという根本的な話から問題が出てきますよということでございます。だから、当然8センチ以上のメーターをつけるのは、これは当たり前であって、それをもっと強力に推進しないと水を使わせないというぐらいにやっぱりやらなきゃいけないし、そこの徹底した調査をやらなきゃいけない。
ましてや、今からしゃべりますけれども、企業誘致いろいろあります。だけども、水が足らないという現実を我々はいろんな報道で聞くのですけれども、現実にそういうことがぴんとまだこないということは、現状がこうだから涵養面積はこれだけ要るとかというような目標設定も全然県はないわけですから、大変厳しいですよ、厳しいですよと言いながら、具体的な目標数値で、これだけの水田は確保するとか、これだけの森林は白川上流には要るというふうな形のものがないことには、何を目標に節水しましょう、何を目標に水を確保しましょうというのは、何もない状態で常にとり行うということでは、これは、私たちが本当に恩恵を受けているこの地下水の保全には、結果的には具体的な手はないと言われても仕方がないのではないかと。今からやっとそういう保全の具体的な数値を決めていくということですけれども、これは私は大事なことだと思います。
そこで、ちょっと次は、知事に質問したいと思います。
誘致企業における地下水大量使用と地下水保全の位置づけということで。
先ほどの質問では、主に熊本地域における地下水の減少傾向に歯どめをかけるために必要な対策と具体的な取り組みについて質問させていただきましたが、地下水の保全との関係で気になる点がありますので、お尋ねをしたいと思います。
それは、IT関連の企業誘致やそのほか地下水を大量に必要とする企業進出のことであります。このことに触れますと、何か企業誘致に反対で、県内景気の機運にまさしく水を差すと思われがちですが、あらかじめ申し上げておきますが、企業誘致を否定しているのではないことを断っておきます。
本年度の予算の中でとりわけ注目を浴びた一つに、半導体関連企業の誘致を想定した大規模な工業団地の計画がありました。事業費は約30億円、このうち22億円を今年度予算に計上し、難航が予想された場所についても8月初旬には候補地が決まり、関係者もほっとしておられると思います。
また、昨年は、菊陽町に大企業のフィルムメーカーの進出が決定し注目されました。その前は、嘉島に大手飲料メーカー、そしてセミコンテクノパークに世界的に有名な電機メーカーなどなど、県内経済の活性化に勢いをつけると期待され、また、安定した県内の雇用創出にも、行政を初め県民の中でも雇用に対する期待が高まりました。
このように、県内に、飲料メーカーは別としても、IT関連企業が集積してくるのは、熊本県が掲げる熊本セミコンダクタ・フォレスト構想に基づくもので、IT関連産業で1兆円の出荷額を2010年までに目指すとすれば、今後も新たな企業誘致が期待できるのかもしれません。
そこで、知事にお尋ねしますが、私は、先ほどの質問で、熊本地域の地下水の減少に歯どめがかからないということから、地下水の保全対策に有効な手だてと目標を定め、官民一体で取り組めと訴えました。先ほど述べた企業はすべてこの熊本地域の中にあります。また、企業誘致の交渉の中で、熊本県のPRとして必ず自信を持って企業立地の担当者が訴える中に、良質な水が豊富にありますよ、水は幾ら使ってもただですよとアピールされていると聞いています。恐らく企業が熊本に決定する大きな理由の一つに、良水で豊富な地下水が決め手になったのは事実だと思います。ここで心配するのが、熊本の地下水は豊富なのでしょうかということであります。
いずれにしましても、企業にとって水は必要不可欠な存在、特にIT関連企業は大量に地下水を必要とするわけですから、こうした誘致企業の地下水大量使用を考慮し、全体としての地下水の使用と涵養のバランスを知事はどのように認識しておられるのでしょうか、お尋ねをいたします。
〔知事潮谷義子さん登壇〕
◆(城下広作君) ありがとうございました。
いろいろと大事な部分は当然もうわかっておられまして、いろいろと協力をしていただくということで、議場内からも、企業から取ればいいのかといろいろあるんですが、具体的に今度は、実際に企業から取った場合とよそで取っている県を若干紹介をしたいというふうに思います。
大口利用者の節水対策と地下水保全の協力についてでございます。
具体的に熊本地域の地下水の使用量を見てみますと、やはりIT関連企業の使用量は突出しており、多いところは年間200万立方メートルが2企業で、それに続く企業でも120万立方メートルを超える状況にあります。そのほかにも、IT関連企業だけではなく、年間50万立方メートル近く使用される企業は、業種も多岐にわたり数十社あり、中には個人で農業用として使用している人もいます。
ちなみに、これらの企業の使用量を地元の水道料金で換算してみたら、熊本市内にあるIT関連企業の水道料金は、年間約6億5,000万円になります。西合志町にあるIT関連企業会社は、熊本市内の業者の使用量と変わらないのですけれども、水道料金が安いため、年間3億8,000万円程度になります。同じく菊陽町にあるIT関連業者が、年間約2億円かかっている計算になります。企業にとってみれば、これだけの負担が水道使用量としてはただになるわけですから、熊本で操業するメリットは大きいと思います。
例えば、いつも水不足で話題になる福岡県の企業の水道使用量を調べてみました。これはほとんどダムの水を使用しておりますので、一般家庭と同じく水道料金を支払わなければなりません。具体的に言えば、大牟田市の化学工場が年間約7億 2,000万円水道料金で払っている。鞍手郡宮田町の国内最大の自動車メーカーの工場が約1億8,000万円、国内2位の自動車メーカーが約7,800万円を水道料金として水道事業者に支払っているようです。水道料金を支払うところと支払わないところでは、水に対する企業の位置づけも違えば、節水に対する取り組みもおのずと変わってくることだと思います。
地下水の最大採取業者である熊本市は、この夏、7月1日から31日まで、市民1人当たり10%節水を合い言葉に、節水社会実験を実施しました。私も一応市民の一人として心がけたつもりですが、調査の結果によれば、期間中に達成したのはわずか1日だけで、実験中の成果は2%にとどまったそうです。新聞やテレビ、広報誌などで呼びかけられたわけですが、目標値を達成するまでには、市民の意識変革が相当必要だと言われています。
ことし7月末、愛知県豊橋市などで、こども環境サミット2005、国連環境計画などの主催ですが、行われました。世界65カ国の630人が参加をし、うち、熊本からも小学校5年生から中学2年生までのエコキッズ8名が参加をしたそうです。
今回のテーマは「持続可能な社会に向けて行動を起こそう」であります。熊本のメンバーは、地下水と森に関するワークショップでは、さまざまな種類の水の味の比較や水のろ過実験を行い、講演では、地下水が1日に進むのは約1メートル、阿蘇山にしみ込んだ水が地下水になって熊本市に流れつくまでに100年以上かかるなどの説明を聞くと、子供たちは真剣な表情で聞いていたそうです。
この大会の最終日には、私たちの約束ということで、世界のリーダーへの要望ということを採択したそうです。各4項目ずつあるのですが、その双方に共通するのが水の問題で、私たちの約束では「水を上手に蓄え、節水し、再利用することができる新しい方法を学び、伝えます。」とあり、世界のリーダーへの要望には「私たちの水源の良好な水質と豊かな水量を守り、すべての人々が、安全な水を確保することができるようにする。」とあります。
これを聞いたとき、何か熊本に言われているような気がしてなりません。古代ギリシャの哲学者、タレースの言葉に、万物の根源は水であるとの叫びが重く感じられてなりません。
そこで、商工観光労働部長にお尋ねします。
例えば、企業誘致を持ちかける場合、企業に対して地下水の価値はどのような位置づけをしているのか、また、大量使用が見込まれる企業に対しては、節水を初め涵養に対する協力のあり方など、具体的にどのように要請していくのか、御答弁をお願いいたします。また、既に稼働している企業に対しての指導の現状と今後の取り組みについての対応をお尋ねします。
〔商工観光労働部長島田万里君登壇〕