熊本県議会 本会議で城下広作の会議録
1.消費税の逆進性対策を求める意見書についての反対討論
◆(城下広作君) 公明党の城下広作です。
議員提出議案第2号消費税の逆進性対策を求める意見書について、反対討論を行います。
この意見書では、消費税の引き上げによって、所得の少ない家計ほど収入に占める税負担割合が高くなる逆進性が存在することも考慮する必要がある、その緩和策を継続的に実施しなきゃならないと述べてあります。
しかし、与党の平成28年度税制改正法案で導入することになっている軽減税率は、ぜいたくな食料品も対象になってしまうために、高所得者優遇税率といった様相を呈している、線引き問題では、新聞が軽減される一方、ライフラインに対しての軽減措置がないことを疑問視しています。
また、事業者の新たなソフトや機械の導入などによる負担、小売店での軽減対象をめぐる客とのトラブルも心配され、さらに、大企業等のみなし課税による益税問題や、軽減税率には巨額の財源が必要であるが、それにより地方財政に影響を与えることは言語道断であると述べられ、結論として、逆進性対策としては、所得税減税と給付の組み合わせによる消費税の払い戻し、いわゆる給付つき税額控除が、コスト、公平性、納得性のいずれもすぐれていると結論づけられています。
私は、この意見書の冒頭に、逆進性対策の必要性を訴えられていることは大変重要なことと共感しますが、軽減税率の認識の違いと、給付つき減額控除導入が絵に描いた餅であることを訴えざるを得ません。
まず、軽減税率が高所得者優遇税率との認識については、2014年、総務省家計調査によれば、消費支出に占める飲食料品――酒類、外食を除く、の割合が、年収200万未満の世帯で30.7%、年収1,500万以上の世帯で15.1%、その差は2倍以上となり、軽減税率による負担軽減額の家計に占める割合からすると、所得の低いほうが負担軽減の度合いが大きくなり、消費税の負担感が低所得者ほど重くなる逆進性の緩和につながることになります。
それにも増して何よりも、飲食品を購入する際、給付つき税額控除では、消費税分を一旦払い、複雑な手続をし、その後で払い戻しを受けるより、軽減税率では、購入時にその分安く支払うほうが負担感がなく、経済の好循環からも、消費行動にプラス効果を発揮するのは明らかであります。
また、新聞――週2回以上、が軽減されることに疑問を投げかけられていますが、日本の消費税に当たる付加価値税を導入する経済協力開発機構、OECD加盟33カ国のうち26カ国が、知識には課税せずとの理念に基づいて軽減税率を導入しています。政治を監視する国民に対して、重要な配慮であると思います。
ライフラインに対しての軽減措置を求める意見については、対象を広げ過ぎると、心配される財源確保に直結し、議論が振り出しになりかねません。
次に、事業者の負担を心配する声に対しては、軽減税率に対応する経理方式は、導入当初4年間の簡素な経理方式を経て、2021年度から、インボイス、適格請求書制度となり、インボイスは、従来の請求書に事業者番号などが加わり、公正な納税に役立ち、年間6,000億とも言われる益税の問題解決にもつながります。
また、政府は、複数税率対応レジを持っていない中小の小売事業者等がレジを導入する際の補助や、制度の周知、軽減対象をめぐる客とのトラブルの相談窓口等の対策を、速やかに対応できるよう準備が進められています。
いずれにしましても、軽減税率は、世界で消費税、付加価値税がある162カ国のうち125カ国が導入されており、日本が導入できないわけがありません。
それより明らかに問題があるのは、今回の意見書で、早急に具体化し、導入することを要望している給付つき税額控除であります。
その最大の理由は、この制度は、国民一人一人の所得と資産の正確な把握が前提であり、それに対応することは、今現在では不可能と言われています。これを可能にするのが社会保障と税の共通番号、マイナンバー制度ですが、定着するまでには随分先の話です。
しかも、買い物のたびに負担が軽減される軽減税率と違って、給付を受けるには申請が必要で、国民に大きな手間を強いることになります。また、膨大な申請を受けつけて給付を行う体制づくりは難しいのが現実です。
このことは、民主党政権時代の国会審議で、国税当局だけでやるには難しい、財務大臣の発言、地方自治体でやると、事実上いろいろ課題が出てくる、総務大臣発言と、当時の民主党の閣僚自体が認めています。
3党合意に基づく社会保障と税の一体改革は、待ったなしです。いつできるかわからない制度に固執するのではなく、政府・与党が長い時間論議し、着実に対策を講じて、国民の期待に応える軽減税率の導入こそが最善であることから、今回の意見書に対して反対を表明し、討論を終わります。