熊本県議会 本会議で城下広作の会議録
・文化芸術振興について

(1)熊本県文化振興基本方針の発展的見直し
(2)文化芸術の振興拡大と人材育成
(3)小・中学生の県立美術館の完全無料化と出前展示
(4)落書き防止条例の制定

◆(城下広作君) やはり医療事故の問題は、私たちは、患者という負い目があるということで、なかなか言えないという立場にあったのではないかと思います。しかし、昨今の医療ミスといいますか、そういう事件を聞くと、まさかこういうことがあるのかなというような形、例えば、患者を取り違えたりとか、右足、左足を間違って治療されるという、まあ、手術を受ける前に、少なくとも、私は右足が悪いですというふうに、あえて申請をしなきゃいけないのかというようなことも起こってしまうということは、これはもう考えられないことでございまして、しっかりと今回の分で、医療安全センターもいろいろありますけれども、そういう形でしっかり取り組んでいただきたいというふうに思っております。  次に、芸術の秋、文化の秋にふさわしい質問を一つを入れようということで、文化芸術振興について、ここではちょっと格調高く話をしたいというふうに思っております。  まぶしい日差しもすっかり影をひそめ、時より降り注ぐ風は秋を感じさせるきょうこのごろでございますが、芸術の秋の到来を心待ちにしておられる潮谷知事を初め知的な執行部の皆さん、また、何よりも文化芸術に造詣の深い議員の皆様、文化芸術振興基本法が昨年十二月七日に施行されてから約十カ月余りが過ぎました。  国の施策の中で、先進国の中ではとりわけ低い文化芸術の予算措置に風穴をあけるきっかけとなる施策や新規事業が展開し始めたようです。  現に、この四月より、全国各地でタウンミーティング方式で順次開催されている文化庁主催の文化芸術懇談会も七回目を数えることになりました。ちなみに、第四回の開催地は、強い希望によりこの熊本の地で開催されました。  基本法の中に「文化芸術の振興に当たっては、」中略でございます「国民の意見が反映されるよう十分配慮されなければならない。」第二条八項、また「国は、文化芸術の振興に関する政策形成に民意を反映し、」中略「広く国民の意見を求め、」第三十四条とあるように、文化庁も、基本法の精神にのっとり全国行脚を開始したのだと思います。  しかし、文化芸術振興基本法が成立するまでには、さまざまな意見や論議が交わされたようです。代表的な例として、この大変不況な時期になぜ文化芸術なのかと批判があったそうです。ところが、文化芸術の振興は経済効果がないとする意見を歴史を通して認識を改めさせることができたのは、一九二九年に、アメリカ・ニューヨーク・ウォール街の株大暴落により始まった世界恐慌に対し、一九三三年新大統領に就任した第三十二代フランクリン・ルーズベルトが、就任直後、アメリカ経済再生の起爆剤として提唱したニューディール政策でありました。中学校の社会科で必ず習う出来事なので、皆さんもよく御承知のことだと思います。  このニューディールとは、新規まき直しとの意味があり、一般的に知られている政策としては、大企業や銀行を援助し、農産物を買い上げ、農民を保護し、労働者の生活を保障するとともに、最も知られたテネシー渓谷開発公社の地域開発事業など、公共投資の増加により失業対策を行い、景気回復を図った政策であります。  そして、もう一つ重要な政策として実施されたのが、余り知られてはいませんが、今日のアメリカの文化芸術大国の基礎をつくった文化芸術政策、通称フェデラル・ナンバー・ワンなのであります。具体的な政策として取り組まれたのが、美術プロジェクト、音楽プロジェクト、劇場プロジェクト、作家プロジェクト、歴史記録調査プロジェクトから成る五つのプロジェクトで、例えば、美術のプロジェクトでは、最盛期の年、五千三百人の美術家や関連の専門職を雇用し、学校や病院など二千五百カ所の公共建築物を使用し壁画制作が行われたほか、一万八百に上る絵画、一万八千の彫刻などが制作され、音楽プロジェクトでは、最盛期に一万六千人の音楽家と関連職の人を雇用し、毎週全米で五千回の公演を実施し三百万人の聴衆を集めたそうです。制作では、千五百人の作曲家による五千五百曲がつくられ、劇場プロジェクトでは、最盛期に一万二千七百人の関係者を雇用、毎月千公演を開催し、その七八%は無料公演だったそうです。  ここで雇用された人の中には、後にハリウッドで活躍するオーソン・ウェルズやバート・ランカスターなどがいたそうです。往年の方はよく御存じかと思います。  こうしてニューディール政策の文化芸術の分野で約四万人の雇用が創出され、このことは、単に雇用創出にとどまらず、アメリカ国民の文化芸術教育プログラムとして実施されたことにもなったということです。  その取り組みからおよそ七十年たった今日、すべての分野において世界をリードする拠点となり、その名も高い音楽の殿堂カーネギーホール、ミュージカルの本拠地ブロードウエイ、美術の宝庫メトロポリタン美術館、そして映画の都ハリウッドと、現在のアメリカ社会の経済にどれだけ多くの富をもたらしたかは言うまでもないと思います。  ある調査で、ことし三月に、首都圏の外資系企業二千三百九社を通じて実施し、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ソウル、香港、シンガポールに在住経験がある五百十四人に東京に対する印象を聞いたら、鉄道、地下鉄の充実、買い物の便利さ、飲食の便利さで九割が満足、一方で、美術館など文化施設の充実、映画館など娯楽施設の充実が六割ほどと、文化芸術分野で評価が低目であったということです。外国人から見た日本は、やはり経済大国であるが、文化芸術大国とまではいかないのでしょう。少し残念な気がします。  しかし、外国の観光客は、日本古来の伝統芸術に非常に関心が高いらしく、歌舞伎や狂言、そして能など、日本人でも余りわかりにくい演劇を鑑賞する人が非常に多くなっているそうです。恐らく、能を見終わった後に、アイドント・ノーとささやかれたかもしれませんが、外国の方が日本古来の芸能を鑑賞されることに親近感を覚え、うれしく思う日本人は意外と多いのではないでしょうか。  いずれにしても、その国の文化や芸術が盛んになれば、新たな雇用を生み、その国のことを知ろう、本物を見たいとの思いで人を引きつける呼び水となり、ひいては、日本全国の観光、そして本県の観光とつながり、経済の活性化に結びつくものと考えられます。  ちなみに、観光の語源は、中国、周の時代にあらわされた易経の国の光を観るという意味で、その国の風景、風俗、文物などを見ることで見聞を広めることを指すそうです。  そこで、第一点目の質問ですが、国も大変厳しい財政難の折、他の事業が軒並み減額されている中、今年度予算が前年度予算より二百億円以上上積みしたということは、文化芸術振興が経済効果に大きく影響するとの期待のあらわれだと思います。  我が県は、他県に負けないくらい、いやそれ以上の伝統文化や文化的遺産が数多く存在するところであります。また、地域独特の伝統芸能、全国でも有名な牛深ハイヤ、山鹿灯籠、清和文楽などが継承され、芸術家輩出の地としても、日本画家の堅山南風氏を初め、多くの画家、夕づるの劇作家で有名な木下順二、最近コマーシャルで有名な、オーディーエーと特徴あるせりふで登場している能楽師の狩野丹秀氏など、各界で活躍されているようです。この風土、この県民の文化芸術の功績と活躍に誇りを持ちたいと思います。  そして、今後ますます文化芸術の向上に県民は期待を寄せることと思います。その期待にこたえるために、伝統芸能における後継者づくりや近代芸術における若者の育成など、課題も山積しています。  そこで、県として、長年本県における文化振興の基本理念としてきた熊本県文化振興基本方針、平成元年十一月策定を、昨年制定された文化芸術振興基本法とすり合わせ、新しい時代にふさわしい内容にと発展的見直しを行ったらどうかと思いますが、県としてどのように考えておられるか、お尋ねをします。  第二点目の質問ですが、やはり文化芸術の振興は、未来を担う小中学生を対象にした教育が大きな役割を占めるのではないかと思います。  国も、今回の予算措置で、新世紀アーツプランを創設、百九十三億円を盛り込みました。子供たちに本物の芸術を見せよう、体験させようという目的で、オペラ、バレエ、歌舞伎、能など舞台芸術体験事業、新進芸術家の海外留学や国内研修にも支援の手を差し伸べる芸術家奨学制度などの育成事業が盛り込まれていますが、先月二十六日の発表で、新世紀アーツプランの一つである芸術拠点形成事業の支援施設として、県立劇場が全国十九施設の中に選ばれたことはまことに喜ばしいことであります。  このような事業を含め、今後県として文化芸術の学校現場における取り組みや地域に根差した伝統文化のかかわりをどのように発展させようとしているのか、ビジョンをお尋ねします。  三点目の質問ですが、同プランの中で、子供の文化芸術体験活動の推進に連動して、東京国立近代美術館や京都国立博物館など、合計七施設の常設展における小中学生の観覧料金が四月一日から無料化になっています。本県において、県立美術館では既に無料化され、大変喜ばれていますが、さらに本物の芸術を見る機会、美術館の来館向上につなげる取り組みとして、特別展においても小中学生の無料化を実施したらどうかと思います。  また、同美術館所有の日本古美術、日本近代美術、東洋美術、西洋美術は四千九百三十八点を数え、すべてが常設しているわけでないことから、日ごろなかなか見れない市町村の子供たちを対象に出前展示を実施していると聞いていますが、子供や保護者の方々から大変喜ばれているので、さらに充実拡大したらどうかと思います。予算を伴うことは十分承知していますが、本物の作品に触れることは、子供たちの可能性を広げるきっかけとなると思います。ぜひ前向きな御答弁をお願いしたいと思います。  最後になりますが、第四点目の質問として、芸術としては到底認められない落書きに関する質問ですが、最近、熊本市を筆頭に県下至るところで落書きを目にします。商店街、空き店舗のシャッター、住居の壁、橋や擁壁など公共構造物、電話ボックスや電柱に至るところまで落書きされ、著しく景観を損なっています。この問題は、全国各自治体も頭を抱え大変苦慮しています。  ことし四月に、熊本市中心街を中心に落書きをしているグループが現行犯で逮捕され、重い判決処分を受け注目を集めました。しかし、まだまだ後を絶つことがなく落書きは存在します。  熊本市は、十月二十七日から国際環境都市会議を開催することから、主催地にふさわしい景観で迎えるため、落書き消し隊なるものを結成し、ボランティアを募集し、落書きゼロを目指すと意気込んでいるようです。  今秋、県としても、全国技能五輪大会や全国菓子博覧会を開催することや、来年の大河ドラマで武蔵が始まれば観光客もふえると予想され、景観の美化に努めることは必要なことだと思います。高見の見物とはいかないと思います。  環境立県くまもと、杜の都、観光地の宝庫熊本を守るために、罰則を盛り込んだ落書き防止条例の制定を行うべきと思いますが、どのように考えておられるか、お尋ねをします。  既に岡山県では、この四月から五万円の罰則金を設けた条例が施行され、早々二十一歳の男性が逮捕されたそうです。  質問の第一点目は企画振興部長、第二点目、第三点目を教育長に、第四点目は環境生活部長に御答弁をお願いいたします。   〔企画振興部長田島淳志君登壇〕