熊本県議会 本会議で城下広作の会議録
・温泉施設の衛生管理体制と温泉の活用推進について

(1)温泉施設における衛生管理体制強化の取組み
(2)温泉施設における衛生管理の表記の在り方
(3)温泉療法の積極的な取組み

◆(城下広作君) 熊本岩田屋の問題は、仮に後継店が地元で立ち上がったとしても、今の状態で仮に営業しても、将来ずっといい形でできるかとなると、少々私は疑問が残ると思います。やはり周りの開発事業、また駅と連動したまちづくり、いわゆる新しく人が本当に集いたいというような形の整備というのは必要不可欠ではないかということでこのことを論じてきました。  また、二点目の県内企業にも受注の機会をふやす、そういう観点がもし強くあれば、前回の問題は逆になかったのではないかというふうにも考える次第でございます。  また、三番目のインキュベーションの問題でございますけれども、半年とか一年とかという枠で入れかわるということですけれども、タイミングというのがあります。今申し込んで頑張りたいという人にとってみれば、そのタイミングをずらすと、やっぱり機を逃してしまう可能性になるのではないかという観点で私は取り上げたつもりでございます。  また、ここにインキュベーションの申し込みがあります。「夢ある人よ ここに来たれ」と、今回夢ある人が来て、ここに来たいとお願いしたんだけれども外れたと、結果的に帰れとなってしまうということになるのではないかと心配するから、ある意味で私は質問したので、その辺をよく御理解いただきたいというふうに思います。  次の第二点目の質問でございますけれども、今大変問題になっております質問を取り上げてみました。  温泉施設の衛生管理体制と温泉活用推進についてでございます。  日本では、古くは古事記や日本書紀に温泉の効用に関する記述が見られ、江戸時代には湯治が一般的に行われるなど、温泉の保養効果が幅広く活用されていました。  明治時代になって近代的な西洋医学が導入されましたが、温泉医学も、ドイツの内科医ベルツなどの指導によって、近代医学の一分野として研究が進められてきました。  そして、今日に至るまで、豊かな温泉資源に恵まれながら、保養、観光を初め、娯楽、レジャー、健康増進施設と多方面で活用され、特に最近では、むしろ心身のストレス状態からの解放や健康維持、疲労回復、体力増強など、予防医学的な面に関心が向けられており、社会の要望も強くなっていました。  特に、我が熊本県は全国に名だたる温泉県であります。平成十二年度末の全国の源泉数でも第五位という数字を誇り、県下全域にすぐれた泉質の温泉地を有し、全国的にも有名となりました。そのせいか、近年になり温泉ブームが巻き起こり、県内の各自治体は、第三セクター方式で大型の温泉センターを競い合うように建設し、現在五十四市町村で八十五施設を数えるに至りました。  官民の旅館やホテルを含めた温泉施設を利用する人は相当な数に上り、昨年一年間で温泉施設のある旅館やホテルなどで宿泊した客数が約三百三十六万人に達したことは、県民の人口の約二倍に相当し、県内における経済効果ははかり知れないものがあり、今後はその期待もますます盛り上がってくると信じるものです。  ところが、期待に水を差すかのごとく降りかかってきたのが、宮崎県日向市で端を発したレジオネラ菌問題であります。温泉を好み心身ともにいやしを求めてきたはずが、まさかこういう結果になるとはだれも想像しなかったと思います。亡くなられた方々の御冥福を心からお祈り申し上げたいと思います。  この問題は、多数の温泉施設を有する本県にとっては衝撃で、県民の関心も非常に高いのです。  県の発表によれば、レジオネラ症発生が全国で相次いでいることから、平成十二年七月に、全国の都道府県に一斉点検を実施するよう当時の厚生省より通達があり、それを受けて、本県も翌月の八月には立入調査を実施し、二百四十一施設のうち三分の二の施設で水質検査が不十分であり、また、当時レジオネラ菌の検査については国の基準もあいまいで、努力目標という扱いであったことから一斉検査の検査結果に含まれておらず、確認はとれませんでした。  そして先月、中間報告ではありましたが、初めて統一様式の一斉検査が循環式浴槽を持つ公衆浴場と旅館で実施され、百八十三施設のうち百八十施設で、国の定める検査要件に不備があり、国も平成十二年十二月にレジオネラ菌の基準値を明確に設け徹底したのですが、残念ながら十カ所の浴場から国の基準を上回る結果が出てしまいました。また、今月九日には、熊本市内の循環式浴槽を持つ施設の調査においても、十二の施設が国の基準を超えていると発表がありました。  そこで、第一点目の質問ですが、今回の問題の本質は、行政と事業者がレジオネラ菌に対しての知識が余り理解されておらず、今まで本県において何も起こらなかったことで心配がないだろうという過信があったのではないかと思います。それが宮崎県日向市のレジオネラ症発生で目が覚め、大騒ぎとなったということでしょう。  本来であれば、今から約二年前の平成十二年七月の時点で、以前のレジオネラ症発生が全国で相次いでいたときの教訓を生かし、県の指導のもと、事業者とレジオネラ菌に対しての知識と浴場施設の管理のあり方などを徹底して学ぶ機会が必要であったと思います。  前段でも述べたように、本県経済は、観光面で温泉旅館や温泉施設における依存度が極めて高く、一時の衰退も許されないことはだれもがわかっていたはずです。  今月三日、グランメッセ熊本で、県内の公衆浴場や旅館業者など約三百五十人が集まり、専門家からレジオネラ菌を死滅させる洗浄方法や正確な知識を聞くなど、衛生管理について徹底して学んだと聞きますが、県下の温泉協会の会員は四百二十五名と聞いています。ここに参加した人は問題意識も高く、レジオネラ菌の発生防止に全力で取り組むと思いますが、心配なのは、参加をされなかった協会員の中に、今回の問題は自分の施設は一切関係ないとか、正しい知識のないままに、今日までこうした問題を起こしたことがないという自信から、何も取り組まない事業者がいるのではないかということです。  しかし、実際は不備な点が多く、それが原因でレジオネラ症発生を起こした場合が大変なことにつながります。また、今回の件で、県の指導のあり方が厳しく問われています。二度と同じ問題を繰り返さないよう、十分過ぎるぐらいの取り組みが必要と思いますが、県内事業者を衛生管理面で指導する立場にある県として、今後すべての業者に厚生労働省の衛生管理要領の四項目を含め、衛生管理体制をどのように徹底していくのか、お尋ねします。  第二点目の質問ですが、去る九月十日、公明党県議団三名は、阿蘇地方に赴き、温泉組合や温泉旅館経営者の方々と今回のレジオネラ菌問題で意見交換を行い、現場を調査しました。  阿蘇地域の場合、レジオネラ菌が国の基準を超える施設は一カ所もなかったのですが、いつ発生するかわからないという危機感は持っておられました。そのために、衛生管理を組合の中で徹底していきたいと述べておられましたし、また、施設施設で認識の違いがあるようで、その点については話し合いで解消したいと述べておられました。  利用者の立場から、今後の課題として、どの施設が国の定める衛生管理要領を遵守しているのか、また、どの施設が衛生的なのかの根拠となる標記がどのような形で行われ、利用者が目にすることができるのか、ここが一番知りたいことだと思います。  今回の一斉調査で衛生管理に何の問題もなかったところもあります。また、調査直後、速やかに万全な取り組みをされたところも多いと聞いています。信頼回復をする一つの方法として、施設の衛生管理状況をあらわす標記のあり方について、県としてはどのような考えを持っているのか、お尋ねをします。  第三点目の質問ですが、今回、一連の問題が起きたことで心配しているのが、施設の管理体制の油断から引き起こした問題でありますが、それが即、公衆浴場や温泉施設が汚いだとか、温泉自体に行きたくないなどと利用者が過剰反応になり過ぎて、温泉やその効能まで見失い遠ざかっていくことです。  それはなぜかと言えば、国民健康保険中央会の医療、介護保険制度下における温泉の役割や活用方策に関する調査研究の調査結果のデータによれば、温泉を活用することで、老人医療費の抑制や健康意識の向上につながった報告があり、国も今温泉の活用を取り組み始めたからであります。  具体的に言えば、一九九四年から一九九七年の一人当たりの診療費の減少が顕著にあらわれた市町村は、ほとんど温泉の保険事業を取り入れた市町村に多く見られたということです。  例えば、長野県北御牧村では、生きがい対応型デイサービス事業として、介護予防プール教室を実施、六十五歳以上が対象、健康指導、相談を行い、元気老人が増加、九四年、一人当たり診療費六十万四百十七円が、九七年、四十九万六千百五十三円に急落、減少率一七・四%、青森県新郷村では、六十五歳以上の高齢者に月四回温泉利用券を無料で発行、ほとんどの方が利用し、健康相談も実施したところ、九四年五十万六千百六十八円が四十五万七千五百五円と落ち込み、減少率九・六%など、まだほかにも全国の市町村が温泉を活用し健康老人をふやし、医療費抑制に成果を上げています。  昨年二月に大分県で開催されたシンポジウムの発言の中で、北海道大学名誉教授の阿岸祐幸氏は、温泉は休養、栄養、運動のバランスがとれており、正しい健康教室などでより効果が期待できると温泉の効果を強調され、同じく九州大学生体防御医学研究所気候内科教授の牧野直樹氏は、医学的観点から見た温泉の活用法として、温泉保養治療法が必要になってきていると医学的効果に触れられました。  このように、いろんな角度から見た温泉の活用は期待が持てそうで、本県も豊富な温泉施設が多いところであり、厚生労働省も、施設利用料金などの温泉療養費用が、所得税医療費控除対象になる温泉利用型健康増進施設の認定要件の緩和を検討していることからも、本県も十分過ぎるぐらいの環境に恵まれているので、温泉療法の積極的な取り組みを実施すべきと思いますが、どのように考えておられるか、お尋ねをします。  第四点目の質問ですが、温泉を活用した介護予防事業の推進についてであります。  前段で述べた長野県北御牧村の温泉を利用した介護予防プール教室、山形県東根市の、在宅の高齢者と家族介護者に対して、要介護にならないよう温泉旅館でのデイサービスを実施する事業、また宮城県仙台市では、類似の温泉宿泊ホームヘルパー派遣事業など、温泉を利用した取り組みが介護予防事業として展開されています。  我が県も同様に積極的な取り組みをすべきと思いますが、県としてはどのように考えておられるか。  以上四点、温泉施設の衛生管理の面と温泉活用について、健康福祉部長にお尋ねをします。   〔健康福祉部長中村義彦君登壇〕