熊本県議会 本会議で城下広作の会議録
・県内農業の今後の取り組みについて

(1)県農業政策の今後の基本的な考え方
(2)くまもと二十一農業振興運動の成果と新たな運動の計画予定
(3)県産米の消費拡大についての具体的な取り組み
(4)中山間地域等直接支払制度の進捗状況と評価

◆(城下広作君) ありがとうございました。  次に、県内農業について御質問させていただきます。  ことしの秋も、県下各地で黄金色に染まった稲穂を見ることができ、日ごろざわざわした生活を送るものとして、田園風景はまさに心の隅から隅まで洗浄してくれる気分を感じさせ、ついつい足をとめて深呼吸をしてしまいました。  特にことしは天候に恵まれ、台風被害がなかった上、病虫被害も小雨のおかげで少なく、県下の作況指数はやや良という全国平均とほぼ同じ結果であったようです。本来であれば、生産者である農家はもちろんのこと、我々消費者も何かしら安堵感にも似た気分になるのですが、農家にとっては決してそうとは言えないのが今の農業を取り巻く環境なのです。  ことしの予想収穫量はおおよそ二十二万トン、前年より二%ほど落ち込み、米の生産調整、いわゆる減反が始まった七〇年以降四番目の低水準で、作付面積も、前年より三%減の四万二千七百ヘクタールで、過去最低だそうです。  最も大きな原因は、やはり減反面積が拡大されたほか、需給調整水田で青刈りが実施されたためであります。国も生産調整など苦肉の策として実施しているのでしょうが、生産者にとっては、汗水流してもう少しで収穫というときに稲を刈ることは、農家にとって自殺行為だと怒りをあらわす人もいます。中には、当然青刈りを拒否されるところもあったり、自分で刈るのが忍びないため、ほかの人にお願いをして青刈りをやったところもあったようです。  御承知のとおり、我が県は、農業粗生産額で全国第六 位、基幹的農業従事者、いわゆる専業農家は全国第五位 と、我が国有数の食糧生産基地として重要な役割を担い、県においても、経済基盤はもちろん、環境や地下水などの生活基盤に不可欠な機能を発揮しています。  国は、現在の食糧自給率四〇%を二〇一〇年までに四五%に引き上げる目標を掲げています。また、農業の多面的機能を評価し、新農業基本法に基づき、平成十二年四月から、中山間地を対象に、日本農政始まって以来初めて直接支払い制度を実施し、農地を守り、先月のWTO農業交渉の際には、農産物輸出国で構成するケアンズ・グループとの交渉で、食糧安全保障や環境保護、農村の維持を前面に出し、EU諸国や韓国を味方につけ、また、地球温暖化防止の京都議定書の批准に踏み切るきっかけとなった、森林や農地がCO2 削減に一定の効果があるとの評価を受けたからであり、我が国において、農地保全策の主張は国際社会においても一定の評価を得ているのです。  しかしながら、農水省の発表によれば、二〇〇二年度の米の生産調整の規模は、本年と同じく百一万ヘクタールの生産調整、いわゆる減反をすることを決定しました。また、二〇〇三年度からは、現行の面積による生産管理から生産数量そのものの管理へと移行することが検討されていますが、農地保全策の強化とは到底思えないような気がします。確かに米の場合、今現在の自給率が一〇〇%を保たれているから生産調整をするのでしょうが、国は今までに米を初め農産物の消費拡大に全力で取り組んできたとは思えません。  このようなことから、我が国は、農業分野において諸外国の輸出目標となり、大規模生産や低賃金を背景とした安価な農産物の輸入攻勢に遭っているのですが、皮肉なことにその裏には、日本企業の進出や農業技術の流出も影響しているのです。このような状態が長く続けば、農業県として経済的影響は大きく、就労の面においても心配されます。  そこでお尋ねします。  第一点目の質問ですが、中国や台湾のWTO加盟によ り、今後ますます米も含め農産物の輸入には拍車がかかると予想されますが、本県農業政策の今後の取り組みは、あくまで国の政策や方針に沿うような姿勢でいくのか、それとも、我が国の食糧生産基地としての自覚を持ち、さらなる発展を目指し、農業の多面的機能を十分発揮する重要な役割も重視し、農業独立県を目指すとの思いで今後の農業振興に取り組む姿勢でいくのか、知事のお考えをお尋ねします。  第二点目の質問ですが、県の農産物の拡大を目標としてくまもと二十一農業振興運動を実施され、三年間の運動期間が来年三月で終わろうとしているわけですが、当初掲げた目標を含め同運動の成果はどうなる見通しなのか、また、来年度も、目標設定などを含め、さらなる県の農産物の消費拡大につながる運動の計画はあるのか、あるとすれば、その計画を教えていただきたいと思います。  第三点目の質問ですが、県産米の消費拡大についてでありますが、国の減反政策の理由として消費の低迷が最も大きいのですが、ただ黙って消費が低迷しているから減反するというやり方では、ますます外国の安いものに脅かされ、日本の農業は衰退の一途をたどるだけです。  我が県においても、県産米の消費拡大が伸びれば、多少なりとも減反や青刈りなどの抑制につながり、その第一歩として、県内での消費拡大の運動は必要な政策と考えます。いわゆる地産地消なのです。現に兵庫県では、おいしいごはんを食べよう県民運動推進室を設け、消費拡大に努め、福島県では、ことし六月から、毎月八日を、米をもっと食べよう運動を積極的に展開しています。  国民一人当たりの米の消費量、九九年には六十五キログラム、約四十年前は百十八キログラム、約二倍の消費量がありました。今の現状で、毎朝御飯茶わん一杯、精米六十グラム多く食べると、現在減反している六十万ヘクタールの水田が生き返り、その水田で吸収される二酸化炭素の量は東京ドーム千五百二十杯分になるそうです。  我が県も、県産米のさらなる消費拡大に向けて取り組むことは、農業の多面的機能を維持するとともに、生産者の活力につながると思いますが、お考えをお尋ねします。  次に、第四点目の質問ですが、農業の多面的機能を発揮するため、昨年四月より実施された中山間地域等直接支払い制度が二年目を迎えようとしていますが、県下の対象地域の進捗状況はどうなのか、また、実施された地域の農家の声はどのような評価を得ているのか、お尋ねをします。  以上四点、第一点目の質問は知事に、第二点目から四点目の質問は農政部長にお尋ねをします。   〔知事潮谷義子さん登壇〕