熊本県議会 本会議で城下広作の会議録
・熊本地域の地下水保全と対策について

(1)地下水位等の実態
(2)地下水保全対策の状況
(3)水の循環利用と水量測定器の取りつけ率
(4)地下水の受益者負担

◆(城下広作君) 万日山の回答ですけれども、周りの景気を考えながらやるという話でございますけれども、もう既に購入してあの状態になって二十七年ぐらいたっていると聞いております。恐らく、あの新幹線が向こう十年で仮にできたときに、新幹線を利用される方が、熊本は森の都と聞いてこられた方が、熊本駅に来られたときにあの山を見ると、そのまま、ああここは熊本駅と違うというふうに、素通りをされていくのではないかと心配をしています。そのくらいやはり陸の玄関としてのイメージとして非常に悪いと思うので、やはり緑を整備できるような、例えば事業とか、具体的なことをやっていただきたいというふうに心配しているわけでございます。  また、住宅供給公社の計画でございますけれども、武蔵ヶ丘東ニュータウン以降は考えてないということであれば、今後公社が宅地開発をするという必要がなくなるというふうに解釈すれば、今後その業務の分野では縮小ということを考えていいのではないかと思います。  次に、熊本地域の地下水保全と対策についてお伺いしたいと思います。  昨年十二月、熊本市民意識調査で、熊本の水を誇りに思っていると答えた市民は九三%あり、その反面、地下水減少を危惧している人も九一%を占め、地下水に対する市民の意識が非常に高いことを改めて知ることができました。  熊本市の人口が約六十六万人、周辺市町村を含めると九十万人を超える人々が、生活用水を中心に、工業用水、一部農業用水と、すべてを地下水で賄っている現状です。このことは、全国的に例がなく、世界的にも非常に珍しいことと聞き及んでいます。  このような背景から、当該地域の地下水に関する調査研究は、日本国内はもちろんのこと、世界的にも例を見ないほど蓄積があると言われ、ここでも地下水に対する意識の高さをうかがわされます。  この地下水の恩恵も、世界一のカルデラを持つ阿蘇山に始まり、白川を流れ、大津町や菊陽町の白川中流域水田の役割が極めて大きいと、調査研究のデータをもとに、専門家から言われています。  この白川中流域部の開田は、今から約四百年前、加藤清正公によって着手され、子息の忠広及びその後の細川藩に引き継がれ、約一世紀を経て完成し、現在に至っているわけです。今現在も、大津の町裏に当時のままの石積みの水路が残り、利活用されている様子を見たとき、改めて先人の築き上げた貴重な遺産に心を打たれ、感動しました。  また、白川中流部の開田は、極めて水を通しやすい火山性の土壌で、一般的な水田と比較すれば約十倍の浸透力があり、いわゆる地下水バイパスを通って江津湖、浮島の湧水群や健軍、沼山津などの水源地を構成し、現在熊本市上水道の最大の水源地として知られています。  同地域の浸透量は、平成六年で日量百万トン。同時期の熊本市域の地下水利用は日量三十六万トンと言われ、大半が中流域水田によって保持されているのです。  水質の面でも、白川の河川水は、歯のエナメル質を溶かす弗素を多く含んでいるということで、飲用には不適と言われていますが、水田を浸透することによって弗素が除去され、天然のフィルター役を担っているのです。よって、この水は、農水省分類のナチュラルミネラルウオーターと呼ばれています。  ところが最近では、昭和五十二年に一日百二十万トンあった浸透量が、昨年は一日七十万トンに激減してしまいました。原因として考えられることは、近年の宅地開発による住宅化や減反政策を受けての水田面積の減少、また深井戸のくみ上げなど考えられるわけですが、何といっても水田の減少が大きな影響を与えているのは紛れもない事実であるようです。  このような貴重な水資源であるので、過去の歴史の中でさまざまな争いや問題が生じたこともありました。渇水期には、中流部の七つの堰で白川の流量のほとんどが取水されたことにより、下流部は極端な水不足となり、開田以後、約三百年以上にわたり水をめぐる争いが続き、時には血の雨が降るという不幸な歴史もあったそうです。  また、明治四十二年に上水道布設に関する私案が当時の熊本市長から出され、それを契機に上水道の拡張整備が進む中、熊本地域の地下水メカニズムが近代的手法で解明され、最良の帯水層である砥川溶岩層の発見の端緒となったわけです。  それ以降は、地下水の大量取水が、上水道にとどまらず、昭和三十年代に入ると、当時の米作中心から畑作への転換期という国の意向もあり、台地を中心とした無水地帯に深井戸の地下水開発が活発になり、農業振興に寄与してきたわけです。  昭和四十年代に入ると、熊本市を中心に人口が急増し、それに伴って、大量の取水により地盤沈下や塩水化などの兆候が見られ始め、平野部での大量取水に問題が出てき始めました。  そうした歴史を踏まえる中、昭和五十年代に入ると、健軍水源地の隣接地に日本住宅公団九州支社による大規模な中高層住宅の建設が持ち上がり、熊本市上水道の最大の水源地であることから、この県議会でも当時は大きな問題になり、論議され、専門家の調査結果から、団地建設は水源に与える影響が大きいとの判断をもとに、事業の中止を決定した経緯があります。  その後、同地は熊本市が買い上げ、現在は市民の運動公園として市民に親しまれ、残りの地においても深井戸群を設置し、健軍第二水源地と名づけられ、健軍水源地の補助水源として重要な役割を果たしています。  さらに、水資源についての関心はとまることなく続き、ついに、熊本市議会において、一九七六年、昭和五十一年、地下水保全都市宣言、翌年の五十二年、地下水保全条例の制定と続き、県においても、一九七八年、昭和五十三年、地下水条例が制定され、地下水を大切にしようとの機運が高まってきました。  今までのように、いかに地下水開発を行い、取水を増し続けるかとの考えから、いかに地下水保全に力を注ぎ、守っていこうかに変わろうとしたわけです。  しかし、問題はそれで解決したわけではなく、その後も人口増加に伴う水田の宅地化は進み、地下水の豊富な土地柄で、水を大量に使用する企業が深井戸の建設を行ったり、住民の意識の中に水は豊富だから大丈夫との気持ちから、一人当たりの使用量も他県に比べて非常に多かったりと、さまざまな原因が重なっていると思われますが、結果的に熊本市周辺の地下水は減少し続け、その様相を如実にあらわしているのが八景水谷公園の水がれ現象。数年前まで大量の水が自噴していたときもあったようですが、今に至ってはその面影すらなくなっています。  また、熊本の観光を代表する水前寺公園は、豊かな水を命として、見る人すべての人に感動を与えていた公園が、今現在では、湖底から強くわき上がる様子を見る箇所はなくなり、多いころだったときに比べると水位が二、三十センチは下がっているらしく、公園管理者に話を聞くと、年間通して水が減り、特に一月から五月までは一番渇水がひどく、観光シーズンで見学者が多いときに、実態としては深井戸ポンプで水をくみ上げ、その場しのぎをここ数年行っていますと、何とも寂しい口調で語ってくださいました。  また、江津湖に関しても同じ状況で、しゅんせつ工事を行ってから湖底が美しくなり、水の量もふえたかに見えますが、実態は、水位自体は低下し、湧水箇所も減少し、国指定のスイゼンジノリの絶滅も心配されるありさまです。  このような実態から、昭和五十九年、六十年及び平成五年、六年の二度にわたって、県、市共同で、大がかりな地下水調査、熊本地域地下水総合調査が行われ、地下水の実態やさまざまなデータを集積できたと思いますが、質問の第一点として、その後、地下水の水位も含め、今現在実態はどのように推移しているのか、県としてつかんでいる情報を教えていただきたいと思います。  第二点目ですが、第一回の大がかりな調査が行われた昭和五十九年、六十年以降の昭和六十一年より、県と関係十六市町村が、地下水利用の適正化や地下水の涵養保全についての取り組みのためにと、熊本地域地下水保全対策会議を設置し、現在約十五年たっていますが、昨年の浸透量の激減を考えれば、対策会議の機能が発揮できたのかと疑問に思うわけですが、対策会議設置後、地下水保全の有効策として、どんな意見が交わされ、具体的にどのような対策を講じられてきたのか、教えていただきたいと思います。  私が知っていることとして、まず、昨年一月に、阿蘇郡西原村と森林法に基づく森林整備協定を結んで、熊本市が原野に五十七・八ヘクタール水源涵養林を構成することと、先月十五日、県庁において、十六市町村外の矢部町と西原村と同じように、森林整備協定に基づき、原野二十二ヘクタール水源涵養林として造成することぐらいですが、そのほかに取り組んでこられたことがあれば教えていただきたいと思います。  次に、三点目の質問になりますが、十六市町村の地下水のくみ上げの実態を見てみますと、やはり大口の利用者は各市町村の水道事業者で、県民の重要な生活用水として使用されているようです。それに次ぐ形で事業者の工業用水等があるわけですが、例えば平成十年度採取量で見てみると、年間使用量が百万トンを超える事業者が十九社あり、十万トン以上であれば百六十二社になります。  この十万トンといってもどれくらいなのかぴんときませんが、わかりやすく例えますと、県庁の東棟が、横幅百十五メートル、縦幅二十メートル、高さが五十一メートルで計算すると十一万七千トンになり、大体あの大きさの升一杯分と思っていただければいいと思います。  そして、十万トンの水を水道水から使用したら幾らぐらいになるか熊本市の水道局に聞いてみましたら、こんな契約はないのですが、大体三千万ぐらいなのではないかと言われました。  工業用水として利用している企業も、近年は高度な循環装置を設置して努力しているわけですが、やはり多量の水を必要とすることは避けて通れないようです。  先ほど述べてきた地下水の低下を防ぐためとして涵養林を増設するなどの動きもあるようですが、今後は、このような実態を踏まえ、地下水利用者に対して水の大切さを訴え、工業関係者に循環装置の徹底を図ってもらいたいと思いますが、実態はどのくらいの割合で循環装置が設置されているのか。また、本年一月より井戸届け出者にメーターの設置が義務づけられたが、その取りつけ率は現在どのくらいなのか、お尋ねします。  最後に、第四点目の質問になりますが、知事の議案説明要旨の中で「熊本地域において、地下水の受益者が応分の負担をし」とありましたが、具体的にはどういうことなのか。また、受益者負担は、だれを対象として、幾らぐらいの負担を求めていこうと考えておられるのか、お尋ねします。  最後になりますが、最初に述べた熊本市民アンケートに、涵養域保全のための協力金を「負担すべき」が一三%、「家計を圧迫しない程度なら考えたい」六一%、「負担は望まない」が一九%ありました。  以上、地下水の保全の立場から、四つの質問をさせていただきました。環境生活部長に御答弁をお願いいたします。   〔環境生活部長安田宏正君登壇〕