熊本県議会 本会議で城下広作の会議録
・地方分権と市町村合併の問題について

(1)地方分権一括法施行後の県の取り組み
(2)市町村合併の推進
(3)合併の検討における地域住民の位置づけと参加促進
(4)住民投票制度の導入
(5)市町村における合併の動きと今後の取り組み

◆(城下広作君) 新幹線事業は、とにかく大規模工事で、相当なお金がつぎ込まれます。熊本の経済の浮揚、これにとにかくかけたいという思いの方はたくさんおられると思います。そういう意味で、生きた形で地元に還元できればなという強い思いで質問をさせていただきました。  また、ノリ被害業者の夏場雇用の問題ですけれども、今まですべて海で仕事をされていた方がいきなりおかに上がって仕事をするというのは、何でもできるというような状況ではないと思います。そういう意味で、ありとあらゆる援助をやりながら仕事のあっせんをするという形で、ぜひ頑張って県は取り組んでいただきたいというふうに思います。  また、単県事業の四割削減、公共事業のいろんな批判とかありますけれども、この単県事業というのは、どちらかというと地域密着型で、本当に一般の生活に密着した公共事業であって、このことが激減しますと、やはり道路や水路、また下水道と、いろんな形で不測の状態になるのではないかという心配もありますので、この辺を十二分に考えていただきたいというふうに思います。  次に、地方分権と市町村合併の問題についてお尋ねします。  昨年四月一日に地方分権一括法が施行されて、やがて一年目を迎えようとしています。これは、明治維新、戦後改革に次ぐ第三の改革と言われ、新世紀の幕あけに向けて、地方にとって大変意義深い第一歩を踏み出すことになります。  御承知のとおり、これまで都道府県や市町村が担当してきた多くの業務は、法律上機関委任事務として位置づけられ、いわゆる中央省庁の指揮監督に従って業務を遂行してきましたが、機関委任事務の廃止により、法制度上権限移譲がなされ、上下の関係から対等の関係になったわけであります。  従来の関係であれば、国の指導のもと、指示に従って仕事をすれば、どのようにそれを処理するか自分で考える必要がなく、またその結果についても責任を負う必要もなく、県または市町村の首長は、国の指導のもとに進んでいけば大きな失敗をすることもなく、また嫌われることもなく、無難にかじをとれると考え、仕事を進めてきた経緯があります。ある意味では気楽な一面もあったわけです。  ところが、その国に追従したことにより、恩恵を受けた面もありますが、ここ数年の国の施策により財政悪化を招いたことも一方では否めない事実ではないでしょうか。  こうした背景から、この地方分権一括法の施行に伴っての最大のメリットは、自主的な条例をつくり、独自の政策を展開し、従来ではできなかった身近な教育やまちづくり、行政サービスを展開するなど、知事の唱える県民とのパートナーシップを深めるチャンスではないかと思います。  そのためには、知事のリーダーシップはもちろんのこと、全職員が知事を支え、意識改革を行い、政策立案能力を育成し発揮しなければ、何も変わらないのではないかと心配する声もあります。ある市町村では、中央省庁がつくったモデル条例をそのまま自分のところの条例とする自治体が多くあり、いざ出発となったときに多くの条例の改正を余儀なくされ、実際に着手する段階で今までの依存体質がたたり、その結果、民間業者に委託するはめになったところも多くあったそうです。  確かに、財源の移譲はなく、権限だけを与え、仕事量がふえているという不満はあると思いますが、今の段階で、これ以上の財政悪化を招かぬよう、あらゆる知恵を絞り、結束していくしかないと思います。  そこで、質問の第一点目でありますが、この地方分権一括法の施行により、国と対等、協力の関係になり、我が県の自己決定権が強まったことにより、今後どのような独自色を出そうとしておられるのか、お尋ねします。  次に、市町村合併問題について質問いたします。  この件につきましては、昨日も自民党の前畑議員も質問されました。地元荒尾方面では、二市八町ぐらいの合併が望ましいとの見解に私も全く同感であります。  さて、先ほど来述べてきた地方分権と密接な関係にあるのが合併問題ではないでしょうか。例えば市町村では、機関委任事務の廃止により、みずからの判断で行う事業や事務処理が飛躍的に増加すると考えられているわけですが、仕事はふえるが、同時に自己決定、自己責任も強く求められ、市町村の力量が問われるようになり、小規模な市町村や高齢者や過疎に悩む市町村は、職員の人材不足や厳しい財政状況のもとでは、せっかくの改革を生かし切れないのではないかと心配しています。そのために、合併は、人材の確保、経費の節約、広域的な調整などの有効な手だてになるのではないかと考えています。  本年一月一日に、新潟県の新潟市、人口四十九万と黒埼町、人口約二万六千人が合併し、人口約五十一万人の新しい新潟市が誕生しました。また、一月二十一日には、東京都の保谷市、人口約十万人と田無市、人口約八万人が合併して、人口約十八万人、西東京市として誕生しています。そのほかにも、四月に茨城県潮来市、五月には埼玉県のさいたま市と、相次いで誕生する予定です。  ちなみに、西東京市の場合はどういうメリットを見込んでいるかといえば、職員数や議員定数の削減で、経費削減額を十年間で百八十九億円程度、都への消防委託費が一自治体分、年間二億六千万円で済むなどの事務経費の削減ができるそうです。  確かに、よいことばかりではないのも事実です。例えばデメリットとして、きめ細かい行政サービスができにくくなる、中心部と周辺部で地域格差が生じる、地域の連帯感が薄れ、コミュニティーが崩壊するなど、まだまだいろいろあるわけですが、全国的に合併に関しての協議会を設置した地域は着実に増し、二月末現在で、二十地域、六十九市町村。その流れは、平成十七年三月三十一日までの時限立法である合併特例法に向けて、急ピッチで進んでいくと思われます。  我が県においても、昨年三月に合併推進要綱を策定しました。これは全国二番目という早い対応でした。また、昨年十二月には、知事をトップとした合併推進本部も設置されました。以来、県下各地で数十回に及ぶ説明会やシンポジウムを開催するなど、積極的な取り組みをされています。その成果もあって、現在、県下各地域で合併協議会設置もにらんだ調査研究の場が設置されております。  しかし、今の段階では、合併の合意に至るところはなく、県が示した合併パターンと異なる枠組みを提唱される首長さんも見られ、合併に向けて意見がまとまるのにはまだまだ時間がかかるようであったり、市町村長の中には、今回の合併は国と県の押しつけだと反対する人もいるようです。こうした論議の大半は、現在行政主導で行われているが、本来の目的からすれば地域住民の意見が重要であり、最も理解者でなければならないのは地域に住む住民と思うのであります。  その流れに沿うかのように、総務省が今国会に提出する住民投票制度は、有権者の五十分の一の署名で合併協議会の設置を求める住民発議を行い、議会がそのまま可決すれば合併協議会の設置が可能になるが、議会によって否決された場合、市町村長が住民投票を実施するとした場合、またはそれがなかった場合には、有権者の六分の一の署名で住民投票の実施を直接請求できる案となっております。  その後、住民投票の結果、過半数を超えることができれば合併協議会を設置するとの案で、合併協議会で市町村が協議をして合意に達し、議会が合併を議決すれば合併の運びとなるわけです。最終的に議会の議決が必要となるが、協議会の設置を促す役目は十分あると思います。そうなれば、今後行政としては、合併によって起こり得るメリットとデメリットを整理し、情報をもっと住民に発信すべきであると思います。  また、総務省は、この三月に市町村合併法定協議会運営マニュアル研究会を設置し、合併特例法の期限内に合併が円滑にできるよう、合併協議会の設置から合併の実現までの具体的な手順を示す報告書を作成する予定を立てたり、そのほかにも、知事を本部長として市町村合併支援本部を設置し、二〇〇一年の早い時期に、各都道府県に合併重点支援地域を指定し、指定を受けてから一年以内に合併協議会が設置されなければ知事の勧告もあり得るなどの内容で、なかなか進まない合併問題に国が弾みをつけるねらいで、新たな合併推進の指針を県に示すようですが、我が県は既に取り組んでおり、体制の面では全国に先駆けている状況であります。  あわせて、合併の体制整備補助金として都道府県に各一千五百万円を配賦、事業に応じさらに上積みするとの財政面でも後押しするそうです。  先月一日で、旧飽託四町と熊本市が合併して、ちょうど十年になりました。旧飽託郡住民に合併のアンケートをとったら「良かった」と答えた人が五〇%、「悪かった」と答えた人が一五%という結果が出ました。そのほか、具体的によかった点、悪かった点多々ありますが、このように、既に合併が終わっている自治体を参考にして、住民運動が活発になることを望みたいと思います。  そこで、合併推進本部長として積極的に取り組んでおられる知事にお聞きしますが、第一点目に、合併の検討における地域住民の位置づけと参加促進について、第二点目に、住民投票制度について、第三点目に、県下の合併の動きと県の今後の取り組みについて、以上三点について、知事の所見を伺いたいと思います。   〔知事潮谷義子さん登壇〕